ナースステーション内での、50代の男性医師と病棟看護師とのやりとりの一場面。
男性医師は、いつも忙しそうにしていて、看護師が話かけると強い口調で威圧的に話してくるため、看護師たちは萎縮して、思うように患者さんの状況を報告できません。
医師とのコミュニケーションが図れないため、患者さんの病状や要望の情報共有ができず、患者さんによって、よりよい医療が提供できない状態です。
朝回診前のナースステーションにて
看護師は夜間の患者状況を医師にしっかり報告したいと思っているが、、、
患者の状況、早く報告して!
時間ないから!
あ、え~と。夜間に不穏時の指示薬を使ったので、朝になってもまだ眠気が強いみたいです。麻痺はないようですが、眠気のせいか言葉が出にくいようです。
夜間、落ち着きがなくて、大変だったことを伝えたかったのに、先生忙しそうだから言えなかったな。
それから、安静が守れなかったから、患者さんの安全を考えて、不穏時の指示薬を使ったって、言いたかったのに。
なんだよ~。その患者の状態、早く言ってくれないとダメでしょ。
何考えてんの!
昨日と全然、状態ちがうよね?CTとか、早めに撮んないと、脳の異常だったらどうすんの?
何考えてんのって、こっちも、いろいろ考えて対応しているのに、なんでわかってくれないんだろ。
え~っと、先生も忙しそうでしたし、、、
これから検査しますか?
当たり前でしょ!CT入れたから、早くして。
あと、点滴も入れたから、すぐにして。
まったく、報告くらい、なんで出来なんだよ。
わかりました。すぐに準備します。。。
感じ悪いな~。普通の言い方すればいいのに。
こっちの言いたいことも言えないよ。
問題分析
自分(看護師)以外の要因
医師はなぜ、そのような言い方をするのかを考えてみましょう。
看護師の人出が足りないのと同様、医師不足も原因で、一人の医師にいろんな業務がのしかかっている現状もあるでしょう。医師は、当直、朝の回診、外来対応、急患対応、緊急手術等、多忙を極めています。そんな中での、病棟回診ですから、限られた時間でやらなければならないことがたくさんあり、医師の気持ちにも余裕がなくなることが予想されます。
自分自身(看護師)の要因
怒られるのが怖いから、余計なことは言わない。
必要な情報を自ら医師に伝えていない。
医師に対して苦手意識があり、知らず知らずのうちに、表情が硬くなっている。
問題解決は可能なのでしょうか
今回の関わりでの問題点は、医師と看護師のコミュニケーションが上手く図れていないことです。100%相手(医師)悪いのあれば、問題解決は不可能ですが、どうやら自分側(看護師)にも問題がありそうです。
それが分かれば、相手の変化を待つのではなく、自分を変えてみましょう(行動変容)。
自分(看護師)の行動変容を意識しての関わり
先生も忙しいなかで、回診に来るんだから、先生が来たら、私から声をかけてみよう
あ、先生、朝早くからお疲れ様です。
先生もたくさんの患者さんに対応しなければいけないから大変ですね。
昨日も急患がきて、大変だったんだ。
夜中も、他の患者さんが具合悪くなっちゃって、全然寝れなかったよ。
このあと外来からも呼ばれているから、何かあれば、早めに報告ください。
実は、〇〇さん(患者)、昨日の夜、せん妄で落ち着きがなくて、準夜の看護師がかなり苦労したようです。
患者さんの安全も考慮して、不穏時のお薬を使いました。そのあとは、ゆっくり休まれたみたいですが、朝方、起床してからも眠気が強いみたいで、発語もにぶい感じがします。
眼球の異常や麻痺はないようですので、脳の異常ではないのではないかと考えています。
先生も穏やかに話を聞いてくれたから、言いたいこと、伝えたいことが言えた!
そっか~。夜勤の看護師さんたちも大変だったね。
でも、発語の異常は気になるから、念のため、CT撮って、みてみようかな。あと、一応、点滴も出しておくから、よろしく。
CTの結果が出たら、外来に一報入れて。
また、なにか変化があったら、いつでも連絡して。
お疲れのところ、ありがとうございました。
CT結果でたら、連絡します。
外来、頑張ってきて下さい。
あとは、よろしくね。
先生、疲れてたけど、意外と優しかったな。
やっぱり、勇気を出して自分から声をかけてよかった。
2つの場面を通しての気付き
★自分から行動を起こすこと大切
★ねぎらいの言葉が大事
★先生が話しやすい雰囲気を作るために、自分から話しかけたことが良かった。
★自分(看護師)の関わり方を変えることで、お互いが気分よく仕事ができる
★言いたいことをすぐに伝えることも大事だが、相手の状況を理解して、伝えるタイミングをはかることも重要。
★ちょっとしたきっかけで、その後のコミュニケーションの展開が大きく変わる。
まとめ
苦手な相手の行動を変えてほしいと思っても、なかなか、相手の行動は変わりません。
相手に行動変容を求めるよりも、自分の行動や考えを「ちょっとだけ」変えることで、相手の行動も変わり、なにより自分の嫌な気分も楽にできます。
そのことに気付いたあなたは、一歩成長しましたね。
苦手な医師が身近にいたら、ちょっと勇気を出して、こちらから、ねぎらいの言葉をかけてみましょう。