看護学生さんの病院または施設での臨床実習では、実習の進捗状況を確認するための中間カンファレンスや、実習での学びを発表する最終カンファレンスが行われます。
それぞれのカンファレンスでは、学生さん自身の看護問題の捉え方や患者さんとの関わり方、看護計画の進め方などなど、実習の種類によっても発表内容は違ってくると思います。
しかし、どんなカンファレンスにおいても、実習を受け入れている病院や施設の指導者さんが求めている答えや発言には共通点があります。
カンファレンスでは、学生さんも、言いたいこと、聞きたいとことが沢山あると思いますが、指導者さんが求める共通項目を外してしまうと、せっかく一生懸命取り組んでいる実習の評価が下がってしまいます。
ここでは、実習指導者がカンファレンスで学生さんに求める発言の共通項目をご紹介します。
はじめはやっぱり、自分の「実習目標を明確に伝える」ことが大事!
学生さんのカンファレンスの発表でよくありがちなのが、いきなり、受け持ち患者さんの病態や治療内容などを、医師記録のように説明することです。
患者さんの病態把握のためには必要なことですが、指導者さんや看護師さんたちは、すでにわかっていることですので、その話は要約程度で大丈夫です。
むしろ、学生さんがこの実習で何を目指しているのか、どこをゴールと考えているのか、実習指導者や看護師さんたちは、それを知りたいのです。
それを知った上で、いろんなアドバイスをしたいと考えているので、まずは実習目標を明確に伝えましょう。
まずは、実習目標を伝えよう!
受け持ち患者さんの家族背景・生活背景は超重要!
看護の視点で重要なことは、その患者さんの「生活の視点」です。
これは、言い換えれば「個別性」です。
実習が始まったばかりの時期は、このことを情報収集するのは、大変なことかもしれませんが、患者さんの生活の援助を行う上では、絶対に外してはいけない情報です。
もしも、カルテから情報が拾えない場合は、カンファレンスの前に、受け持ちの看護師さんや指導者さんに質問することもおススメします。
この質問をすることによって、カンファレンス以外でも、指導者さんに積極性をアピールできますし、何より、看護に必要な情報を正確に得ることができます。一石二鳥ですね。
時々、看護師さんたちも知りえなかった生活背景を学生さんが聴取して、カンファレンスで発表してくれることがありますが、その時は、「お~、この学生さんすごいな~。」と思い、非常に印象が良くなります。
実習とはいえ、看護師さんたちよりも、患者さんと長い時間を共にすることができる学生さんに心を開いて、いろんなことを話してくれる患者さんも意外と多いです。
そして、その情報が、その人の真のニーズだったりして、そこから新たな看護につながっていくことがあります。
患者さんの入院前または入所前の生活状況は?
患者さんのお仕事は?
同居家族はいる?
一人暮らしの場合は、一番近くにいる家族はどこにいる?
毎日の日課、習慣、趣味・・・?
患者さんの病気や治療に対する思いは?
看護目標や計画を立てる際には、患者さんが目指す未来と看護師が目指す未来が一致していなければいけません。
それぞれの年代、性別、社会的役割、人生観など、考え方は様々です。
その考え方は、カルテからは読み取れない情報です。しかし、看護を行う上では、非常に重要な情報です。
この情報は、患者さんとの信頼関係がなければ、聞き出せない内容です。
逆に言えば、受け持ち患者さんといかに良好な関係を築くことができたのか、その発言を聞けば、わかるということです。
患者さんは、自分の病気をどうとらえているのかしら?
治療に対しては、前向きにとらえているのかしら?
学生の自分ができること、できた事をアピール!
実習を通してできたことをアピールすることも大事です!
自分が受け持ち患者さんと関わったことで、患者さんにはどのような良い変化があったのか?
ほんの少しの変化でもよいのです。積極的にアピールしましょう!
看護師長時代に、学生実習に協力してくださった患者さんから良く聞いた話では、
「学生さんがゆっくり話を聞いてくれて、不安な気持ちが少し楽になった」
「丁寧に体拭きをしてくれて、本当に気持ちよかった。腕が痛くて、自分で拭きたくてもふけなかったから、本当に助かった。看護師さんはみんな忙しそうだから、頼みにくくて。だから、学生さんが来てくれて本当に良かった。」
など、学生さんの関わりが、患者さんにもたらす影響は、学生さんが思っているよりも大きいのです。
だから、自身をもって、自分の実践した看護をアピールしてくださいね。
もっと、自分をアピールしようね。
チームで働く以上は、情報発信も、大事なスキルよ。
患者さんを看護するチームの一員としての意識
病院や施設において実習を行う際、患者さんは、学生のみなさんを一人の医療従事者として見ています。
実習とはいえ、患者さんと接する以上は、医療者と同等にみられているのです。
また、実習を受け入れている看護師さん側も、患者さんに関わるメンバーの一員として、学生のみなさんと関わっています。
いまは「チーム医療」の時代です。
医療の高度化や患者の病態や家族背景の多様性によって、医者一人、看護師一人、その他の職種の人が一人で、患者の医療を支えることはできない時代になっています。
「チーム」で患者さんを支えるという意識を持って実習に臨んだ、ということも、是非、カンファレンスで発表してみてください。
きっと多くの看護師さんや実習指導者さんから、称賛されますよ。
そして、なにより、数年後、みなさんが実際に国家資格を得て、看護師さんとして働く際には、絶対に意識しなければいけないことですよ。
「チームの一員として」というキーワードは、魔法の言葉だよ!
「看護観」という言葉の威力!
そして、カンファレンスの締めくくりとして、実習を通して、自分の「看護観」に今回の実習がどのように影響したのかを発表しましょう。
「看護観」というと、なんだか難しいイメージですが、堅苦しい言葉を使う必要はありません。
例えば、こんな感じです。
私は、「患者さんが抱える病気に対する不安を軽減し、安心して治療に臨むことができるように関わって、患者さんが前向きに治療に臨むことができるような」看護を目指しています。
今回の実習では、教科書では学ぶことができない、患者さんの思いに触れ、患者さんが抱える不安にどう向き合うか、その難しさを実感しました。
しかし、その難しさを知って、患者さんの思いを表出できる関わりができるように、もっと、自分のコミュニケーション能力を高めていきたいと思いました。
自分が目指す看護が実践できるように、今回の実習での学びを活かして、患者さんが安心して思いを表出できるような雰囲気づくりやコミュニケーションの取り方を意識していきたいと思います。
実習のなかで、いろんな看護師さんにご指導いただき、自分の目標とする看護を明確にすることができました。
実習のご指導、ありがとうございました。
きれいな言葉で発表する必要はありませんので、自分の思いをいかに言葉にして表現できるかが大事なところです。
カンファレンスで、自分の「看護観」を表現するということを、いままでイメージしたことがなかったかもしれませんが、学生さんとはいえ、看護に携わるものとして、非常に重要なことなのです。
看護は、人と人の関係性を重視する職業ですので、看護師には職業人としての高い感性が求められます。
その感性は、一朝一夕に習得できるものではありませんので、是非、学生の時代から意識して、「感性豊かな」看護師さんを目指してください。
臨床実習、がんばってね~。