ベトナムで看護師になるためにはどのようなことが必要なのでしょうか。ベトナムは日本のように国家資格がなく、教育課程を修了したあと臨床期間が終わった後に医療従事証明書を受け取ることができます。資格を取得してから臨床が始まる日本とは、この点が大きく違います。
また、平均年収は991,273円となっており日本とは大幅に違います。しかし、物価そのものが異なるため単純に比較はできません。ベトナムは就業年数に応じて年収が上がるのが一般的です。
ベトナムの看護師事情とは
ベトナムでは日本のように国家資格があるわけではなく、それぞれの省において教育を受けたものが修了認定を受けるシステムとなっています。
看護師は慢性的に不足している
2019年の人口1万人あたりの看護師は14人となっており、アジアパシフィックの水準(看護師30人)と比較しても不足しています。次のグラフのように医師と比べても看護師が不足していることがわかります。
画像出展:医療国際展開カントリーレポートベトナム編(経済産業省)
日本の2019年の人口1万人当たりの看護師は11.4人となっており、日本と不足している状況は変わりありません。
参考:看護統計資料
国家資格がない
日本とべトナムの看護師事情においてもっとも違うのは、ベトナムには看護師の国家資格がないことです。そのかわりにmedical practice certificatesとよばれる医療従事証明書があります。
医療従事者の対象となるのが、次の6つの職業です。
1. Doctors, assistant doctors(医師やアシスタントドクター)
2. Nurses(看護師)
3. Midwives(助産師)
4. Technicians(技術者)
5. Herbalists(ハーバリスト)
6. Owners of family herbal remedies or treatment methods(ハーブ療法のオーナー)
引用:Law No. 40/2009/QH12 of November 23, 2009, on medical examination and treatment
つまり、ベトナムでは医師や看護師、助産師などにおいて同じ証明書が必要になります。
ベトナムでの看護職員養成
ベトナムでは日本の都道府県にあたるそれぞれの省において、教育を受けた後終了を認める方式となっています。高等学校で1年間の専門教育を受けて修了が認められる初級看護、高等学校を卒業したあとに2年間専門教育を受ける中級看護、3年間の高等看護、さらに4年間専門教育を受けると学士看護の修了認定をされます。
ベトナムにおいてもっとも一般的なのは中級看護であり、看護師になるために2年間勉強をしている人が一般的です。学士看護を所有している人は高次医療施設の幹部候補といった教育機関の教員など看護師においてもっともエリートとして修飾が可能です。
ベトナムでは看護師として働くためには医療従事証明が必要ですが、卒業をしたあと臨床で9か月間研修を修了した時点で取得する流れに入ります。日本では資格を取得してはじめて臨床に入ることができることからこの点で大きな違いがあります。
臨床内容や教育カリキュラムなどは、それぞれ病院や施設によって異なるのが特徴です。
看護師の役割として考えられていること
N看護大学で勉強をする生徒のコメントを見ていると、次のようになっています。
「医者は薬を使って治療するだけであり、看護師の役割は医者の仕事を手伝うことが50%、残り50%は精神面のケアを含めて世話することである」
引用:ベトナムにおける看護教育の現状と看護師の役割-N看護大学での調査より
ほかにもこのようなコメントが多く、看護師が医療において大きな役割をしていることがわかります。
給与や待遇とは
ベトナムでの看護師の平均年収は、164,000,000 VND(991,273円)です。最高額でも250,000,000VND(1,511,087円)となっています。
さらに具体的な給与の割合は次のようになっています。
年収 | 割合 |
250,000,000VND(約1,511,087円)以下 | 100% |
190,000,000VND(約1,148,433円)以下 | 75% |
155,000,000VND(約936,880円)以下 | 50% |
109,000,000VND(約658,838円)以下 | 25% |
また、ベトナムでは就業年数に応じて給与が上がっていくことが一般的です。ベトナムでは経験年数が給与に大幅に影響するため、給与を上げるためには経験年数を増やすことがもっとも重要です。
最初の2年間は平均100,000,000VND(約604,425円)ですが、2年から5年勤めると平均123,000,000VND(約743,443円)と23%給与がアップします。これらのことからベトナムで看護師として働くためには、長期間勤めることを前提に就業することが一般的です。
就業年数 | 平均給与 |
2年未満 | 100,000,000VND(約604,425円)以下 |
2年~5年 | 123,000,000VND(約743,443円)以下 |
5年~10年 | 174,000,000VND(約1,051,700円)以下 |
10年~15年 | 204,000,000VND(約1,233,027円)以下 |
15年 | 224,000,000VND(約1,353,912円)以下 |
20年以上 | 237,000,000VND(約1,432,488円)以下 |
参考:Staff Nurse Average Salary in Vietnam 2022
日本の看護師の平均年収は厚生労働省が発表している令和3年賃金構造基本統計調査によると、2021年は498.6万円です。ベトナムと日本では物価が大幅に異なるため一概に比較はできないのですが、日本と比較すると看護師に対する待遇は低いといえます。
日本の看護師(日本の看護師国家資格取得者)がベトナムの医療機関で看護師として働くために必要なこと
日本の看護師資格がある場合はベトナムの医療機関で看護師として働くことができます。
専門家に該当
ベトナムで外国人が働くためには労働許可証が必要です。看護師資格を持っていれば、次のように専門家にあてはまります。
3. 専門家とは、次のいずれかの場合に該当する外国人労働者をいう。 a) 外国機関、組織、企業が専門家であると認定した証明書を有する場合
引用:ベトナムで就労する外国人労働者に関する労働法の一部条項の詳細規定の政令
必要な手続き
看護師資格を証明できる書類をそのほかの書類に伴い提出し受理されると、日本の看護師国家資格取得者でベトナムで看護師として働くことができます。
ベトナム語が必要か
ベトナム語は話せるに越したことはないですが、病院によっては通訳がいるので必ず必要とは限りません。特に大きな病院であれば通訳が常駐している場合が多くなります。
まとめ
ベトナムでは日本のように資格がなく、必要な教育課程を修了したあと臨床が終わった時点で医療従事証明書を受け取って看護師として正式に就業開始となります。医療従事証明書を受け取るための条件として、海外での医療機関で専門家として証明した場合が含まれており日本の護師国家資格取得者であれば就業できる可能性があります。
ベトナムは、年収面で日本と比べて大きく下がりますが、物価を比較すると待遇が低いとは言い切れません。
参考資料
ベトナムにおける看護教育の現状と看護師の役割-N看護大学での調査より
ベトナムで就労する外国人労働者に関する労働法の一部条項の詳細規定の政令
ベトナムの看護師は日本とどう違う?資格、求人、給料も徹底解説!
Staff Nurse Average Salary in Vietnam 2022
http://www.salaryexplorer.com/salary-survey.php?loc=236&loctype=1&job=874&jobtype=3